第68章 黒幕

米澤奈々香は病室の片隅に、抜け殻みたいに座り込んでいた。手には小さなナイフ。刃先が、そのまま喉元に当てられている。

死んだように濁った瞳に、ふっと光が灯る――けれど、すぐに消えた。

「姉さん……帰ってきたの……」

その声に、南坂海乃の胸がきゅっと痛んだ。

この子は長いあいだ、学校でのいじめと家庭の重圧に潰され、重度のうつを患っていた。ようやく少しずつ良くなってきたところだったのに。

どうして今日、また――。

喉の奥がひりつく。海乃はできるだけ柔らかい声で言った。

「奈々香。姉さんだよ。ねえ、まずはナイフを下ろそう? お願い」

「姉さんに会えただけで……嬉しいよ」

奈々香の瞳...

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